2012年03月05日

西王母

中国紀元前900年代の周王朝五代目穆王の時代に百官卿相の家臣たちが帝王の治世を褒めたたえて集まっているところに侍女を伴なった美しい女性が現れ三千年に一度花咲き実を結ぶ桃花を献じる。この女性こそ『西王母』の化身である。曲の後半、天から降り立ち桃の実を献上し帝王のために美しい舞を舞って祝福し、春風に乗じて雲上に去る鳥とともに天上に帰っていくという世阿弥の作品。
平和な世の中とそれを治めた帝王の徳を褒めたたえた優雅な曲である。有名な美しい表現が多数引用されているので2つほど紹介してみたい。

『桃李もの言わず下おのづから蹊(みち)をなし』
この表現は、司馬遷の史記に出てくる『李広将軍』を褒めて用いられた。この将軍大変勇敢で人望も厚かったので人々が、桃や李(すもも)は自然に美しい花を咲かせ良い香りを放つ。だから何も言わなくても自然に人が集まり木のしたには自然に蹊{みち)が出来るものだ。優れた将軍のもとにも同じように自然に人が集まってくると言っている。

もうひとつは和歌『三千歳(みちとせ)になるといふ桃のことしより 花さく春にあひそめにけり』
三千年に一度花咲き実をつける西王母の桃が今年初めて花を咲かせるとめでたさを詠った和歌。

美しい表現は人の心を和ませて幸せな気持ちにさせてくれる。現実とはかけ離れた世界かも知れないが、日常生活の中で少しでも現実離れした時間を持ち本来持っている自分らしさや忘れがちな優しさを取り戻すのも悪くない。花咲く春、花の美しさに心和ませる。そんな気持ちで自分を少し慎み、奢らぬようにすれば、周りにいる人も幸せに感じるものだと思う。
posted by torianchado at 04:31| Comment(0) | 能楽雑事
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: