2012年09月10日

砧(きぬた)

秋をだんだん感じるようになって来た。朝夕の風も涼しく秋の扇ではなく秋の冷房も必要なくなって来た。いま偶然、世田谷区の砧公園に居るがこちらの砧は謡曲の『砧』とは関係ないようだ。こちらはゴルフ場、その前は皇紀2600年(昭和15年)の時分に防火緑地として整備された場所だ。むかしは鄙びた山里だったとか『砧』の舞台になったところだとかいう情報は無かった。話が逸れたが謡曲の『砧』はそんな陽気な曲ではない。

福岡県芦屋の男性が用事で京都へ行ったまま3年帰ってこない。残された妻が猜疑心と嫉妬を募らせる。更に都からの伝言で今年の暮れには帰ると言っていた夫からやはり帰れないとの伝言が届くと狂い衰え死んでしまう。夫は妻の死をきき、急ぎ芦屋へとかえる。そして、せめてもの慰めにと呪法を使い妻の霊を招き寄せる。地獄に落ちた妻は成仏できずに地獄の獄卒共に責め立てられる。夫は必死に祈り合掌し妻の亡霊は法華経の功徳に導かれ成仏する。という話。

秋の夜ものさみしい山里で砧のおとが響く。これから草木も枯れていく秋の風情を感じさせる名曲。

『能百番を歩く 京都新聞社編 参照』
posted by torianchado at 17:04| Comment(0) | 能楽雑事
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