2012年12月05日

草枕

今改めて読み返しているとこの最初の文章が身に染みてわかるようになった。
特に今の厳しい時代には人の心をいやしてくれる文章だと思う。

「山道を登りながらこう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると安いところへ引っ越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟ったとき、詩が生まれて、画ができる。人の世を作ったのは神でもなければ鬼でもない。やはり向こう三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人がつくった人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。越すことのならぬ世が住みにくければ、住みにくいところをどれほどか寛げて、つかの間の命をつかの間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、画家という使命が下る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするがゆえに尊い。住みにくき世から、住みにくき煩いを引き抜いて、ありがたい世界を目の当たりに写すのが詩である、画である」

もう一度読み返してみてはどうだろう
posted by torianchado at 00:37| Comment(0) | 文学雑事
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